ブフ(モンゴル相撲)入門

ブフ(モンゴル相撲)概説

 モンゴル民族は非常に広い地域に分布しているため、その地域によって方言や風俗習慣などが異なる場合が多いです。
 ブフも例外ではありません。威容を誇る鷹の舞で有名なモンゴル国のハルハ・ブフ、勇壮なライオンの跳躍で入場する内モンゴルのウジュムチン・ブフ、そしてオイラート・モンゴルに盛んな種牡牛の角突きを模した古典的なボホ・ノーロルドンなど、実にバラエティーに富んでいます。

 その中でモンゴル国と内モンゴルのそれは二つの大きな主流です。
 しかし、いずれのブフでも、その身体表現には猛禽や猛獣、強いイメージのある種畜(種馬、種駱駝、種牛)の動きをかたどったものが多く、伝統的な遊牧、牧畜の生業形態との密接な関係が窺えます。
 またブフは古来信仰されてきたシャマニズムとも深く関わっており、祭祀における力士の身体表現は神霊ないしその憑依として認知される場合が多いのです。一般的に力士の身体自体、効験があると信じられているほか、シャマニズムの最高神としてのテンゲルに「〜ブフ」(力士)の名前を持つ天神がいることからも力士はきわめて特別な存在であることが分かります。
 しかし、ブフが近代スポーツへ脱皮していくなかで、そうした象徴的意味と儀礼性が次第に失われてきているのも事実ですが、土地神を祀る宗教的行事・オボ祭りでは依然としてその原型は残されています。 

 ブフには土俵がないため、寄り切りなどの技は存在せず、投げや足技が中心です。
 ウジュムチン・ブフでは、上半身に皮製の半袖のゾドグを着用し、下半身にはだぶだぶの白いバンジル(ズボン)といろいろな模様を飾り付けたトーホー(膝掛け)にブーツを穿きます。
 足の裏以外の部位が地面に付けば負けとなります。足を取ることが禁じられています。
 横綱や大関等に相当する称号制度はありませんが、強豪力士はジャンガーという様々の色の絹切れを結んだ首飾りを付けます。
 力士が年を取り、引退式を迎える際、ジャンガーを故郷の有望な若い力士に譲ります。力士は共同体のシンボルであり、ジャンガーは生命力の宿る呪物であると信じられているので、ジャンガーの次世代への譲り渡しは共同体の生命力の強化であり、「共同体の再生」儀礼であると言えます。
  一方、モンゴル国のハルハ・ブフでは、絹製のゾドグとショーダグ(パンツ)を着用し、足取りが認められる他、頭、肘、膝、背中のいずれかが地面に付けば負けとなります。従って、モンゴル国と内モンゴルの力士が対戦する場合、あらかじめルールを決めなければなりません。
 近年、両地域のブフ交流が進んでいますが、ホームグラウンドによってルールを決めているようです。

 ウジュムチン・ブフは1978年からその近代スポーツ化を図るための一連の改革を行いました。現在では、内モンゴルという地域を超えて、全国および国際試合を開催するようになってきています。99年より賞金制度が導入されています。
 一方、モンゴル国では、1997年より「ブフ・リーグ」が発足し、有力企業によるブフ倶楽部が急増し、セミプロの力士が出現しています。ブフの商業化が進みつつあります。


 いまやモンゴル・ブフは近代スポーツとして新しい道を歩みはじめています。
(文責 バー・ボルドー)


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